遷延性意識障害(植物状態)になった場合の対処法について

代表弁護士 濱 悠吾 (はま ゆうご)

重大事故がもたらす最も重い後遺障害に、「遷延性意識障害」と呼ばれるものがあります。いわゆる植物状態とされる障害で、脳に多大なダメージを受けたことから麻痺や意識障害が起こり、被害者は介護なしには生命を維持することができない状態になります。

被害者本人のみならずその家族の人生にも多大な影響を与える遷延性意識障害に対して、せめて十分な損害賠償請求を行うために、ここでは当事務所におけるサポート体制について解説します。

自発的な生命維持活動が困難になる「遷延性意識障害」の定義

遷延性意識障害の定義は日本脳神経外科学会により明確にされており、以下いずれの事柄について治療継続しても3ヶ月以上改善されなかった場合を指しています。

  • 自発的に移動することができない
  • 自発的に食べることができない
  • 排泄をコントロールできない
  • 発語しても意味を伴わない
  • 簡単な指示に応じることもできるが意思疎通はほぼ不可能である
  • 眼球活動は見られるが認識ができない

人間が生きる上で必要な機能を維持できず、他者による完全介護が不可欠な状態であることがわかります。

被害者が遷延性意識障害となることで、被害者本人の人生が奪われるだけでなく、大切な家族の未来を奪われ介護を強いられる家族の苦痛も多大なものとなります。

遷延性意識障害の損害賠償請求には成年後見人が必要

自発的な思考や行動が奪われた被害者は、本来行われるべき損害賠償請求を遂行することができないため、成年後見人を選任して代わりに諸手続きを進めることになります。

成年後見人は家庭裁判所に申し立てた後に選任され、以降は、損害賠償請求はもちろん日常生活における契約事などを代理していきます。普段全く馴染みのない成年後見人の申し立てについては、当事務所が丁寧にサポートを行いますのでご安心してご相談ください。

なお、遷延性意識障害となった被害者が未成年者である場合は、親権者が法定代理人となりますので、成年後見人の申し立ては必要ありません。

後遺障害等級認定における争点は「逸失利益」と「余命制限」

遷延性意識障害は介護を要する後遺障害1級に該当する可能性があり、そうなると自賠責保険からは満額の4,000万円が支払われることになり、労働能力喪失率は100%であるとして逸失利益が計算されます。

しかし保険会社は、遷延性意識障害患者の余命の短さを理由に賠償金の減額を主張することがあるため、慎重に対応する必要があります。

逸失利益が争点となる場合

被害者が死亡した場合、逸失利益から将来的な生活費分が控除されることになります。

このことから相手方保険会社は、遷延性意識障害の者は寝たきりの生活となるため、将来的な生活費は通常に比べて少ないと主張することがあります。

この主張が認められれば逸失利益は大幅に減額となるため、必ず弁護士に依頼して隙のない反論を行い、正当な逸失利益を求めなければなりません。

余命制限が争点となる場合

例えば40歳男性の余命について平成22年の簡易生命表を参照すると、健常人であれば40.81年の余命があることがわかります。ところが相手方保険会社としては、寝たきりである遷延性意識障害者の余命は10年程度が平均的であると主張してくることがあるのです。

これには、将来的な介護費用を大幅に減らす計算をすることで、賠償額を低く抑えようとする保険会社の思惑が存在します。

当事務所ではご家族の気持ちを汲み取った対応をしています

保険会社による一方的な主張について、現在の裁判では否定的であり、健常人と同じ平均余命を基に賠償額を算定する判例も散見されます。

従って、相手方保険会社の主張を鵜呑みにすることなく、的確に反論を行い正当な権利を認めてもらわなければなりません。

立証能力の高い証拠を用意し、隙のない反論を行うためには、弁護士の専門的な力が不可欠となりますから、必ず交通事故に強い法律事務所に相談するようにしましょう。

当事務所では依頼件数の約8割が交通事故案件であり、死亡事故や重大事故の経験を踏まえて、ご本人及びご家族の気持ちを十分に汲み取った対応を心がけています。

被害者本人としては、今後の人生でやりたいことや行きたい場所、食べたいもの等がいろいろあったはずです。

そうした可能性が断たれた事実は重く受け止めなければいけませんし、被害者側の全ての関係者にとって一生消えることのない深い傷となったことも、決して看過されるべきではありません。

賠償金そのものは慰めにもならないかも知れませんが、ご本人及びご家族が適正な賠償金を受け取る権利を実現することが、弁護士としてお手伝いできる数少ない役割であると考えています。

ご本人が将来どのような展望のもとにどのような未来を描いていたのか、それを賠償金額としてしっかりと反映させられるよう尽力します。

重大事故の経験がある当事務所だからこそ、事件の流れや賠償金の相場感はもちろん、ご本人やご家族の心情を察した対応をすることができます。

現状や先々についてご不安が大きいことと思いますので、ぜひお早めにご相談いただけることをお待ちしております。