後遺障害における併合・相当・加重とは?詳しく解説

代表弁護士 濱 悠吾 (はま ゆうご)

交通事故によって複数個所に後遺症が残ったり、以前から障害のあった部位を再び怪我したりした場合、後遺障害等級では3つの判断方法により賠償金額を算出することになります。

ここでは、自賠責保険で定められている等級認定方法のうち、複数障害を扱う時に必要な併合・相当・加重の3つについて解説します。

2箇所以上の別部位に後遺障害を負った場合は「併合」で等級決定する

事故を起因とする後遺障害が2箇所以上に及ぶことがあり、この場合は程度の重い後遺障害の等級を採用するか、重い方の等級を繰り上げるかして、総合的な後遺障害等級を決定します。併合は以下の原則に基づき決定されます。

  • 5級以上の後遺障害が2つ以上ある ⇒ 重い方の後遺障害等級を3つ繰り上げる
  • 8級以上の後遺障害が2つ以上ある ⇒ 重い方の後遺障害等級を2つ繰り上げる
  • 13級以上の後遺障害が2つ以上ある ⇒ 重い方の後遺障害等級を1つ繰り上げる
  • 14級の後遺障害が複数ある ⇒ 14級のまま

別の系列にそれぞれ後遺障害が残った場合でも、それが同一部位であった場合は、同一系統の後遺障害であるとして見なされます。また、系列も部位も異なる後遺障害については、例外的に組み合わせ等級の扱いとし、合わせて評価されることになります。

なお、2つの後遺障害を併合して等級繰り上げとなったものの、繰り上げられた等級を満たす症状ではないと判断された場合は、併合等級が下がることもあります。これを「障害の序列を乱す場合」と言います。

等級表にない後遺障害を「相当」として認める場合

後遺症該等級表に該当するものがないが、その程度から考えて適切とされる等級を「相当」として採用することがあります。これが認められるのは、以下2つの場合に限られます。

他のどの後遺障害の系列にも属さない後遺障害

例えば味覚や嗅覚の障害等はどの系列にも属さないのですが、神経症状に近いため、12級の「局部に頑固な神経症状を残すもの」と見なされ、味覚障害を12級、嗅覚減退を14級とすることになります。

これら複数の障害があった場合は、併合により準用等級を決定することになります。

障害系列はあるが等級として示されていない場合

左右いずれかの脚の関節が機能せず、かつ膝の関節にも重い障害が残った場合、脚関節の用を廃したとして8級が、膝関節に機能障害が残ったとして10級がそれぞれ認められます。

この際、より重たい等級である8級を併合で繰り上げることによって、7級に相当する後遺障害であると決定します。

既存の後遺障害が事故により悪化した場合は「加重」の扱いになる

すでに後遺障害を持っていた人が、事故によって同じ部位に再び傷害を受けたために後遺障害が重くなった場合、加重として扱われます。

もとからあった後遺障害が先天的なものか、あるいは後天的なものか、別の事故によって負ったものかは問われず、今回事故により同一部位の障害が重くなった事実が評価の対象となります。

例えば、すでに左右いずれかの足関節から下を失っている人は5級となりますが、今回事故により膝関節から下を失うと4級の扱いになります。

この場合の評価は、今回事故による4級の賠償金額から既存の5級分を差し引いた金額が支払われることになるので、自賠責等級表に基づくと4級1,889万円-5級1,574万円=315万円が実際の支払額となります。

難解な等級決定に備えて経験豊富な当事務所へご相談を

併合・相当・加重は複数の後遺障害を組み合わせて判断されるものであるため、入通院治療中から、医師との十分なコミュニケーションをとったり、必要な検査を積極的に受けたり、必要十分な通院回数を維持する等の対策が必要となります。

当事務所では、後遺障害等級認定を見据えてアドバイスを行っていきますので、併合・相当・加重の対象となった場合でもより有利な結果を得られるよう力になることができますし、万が一不満の残る等級に認定されたとしても、豊富な異議申し立て経験を活かして、適切な等級を徹底的に追求します。

初回相談時にはある程度の見通しを立てることもできますので、ぜひ無料相談をご利用ください。