交通事故における労災保険の役割とメリットについて

通勤を含む業務時間中に事故に遭った場合、労災保険を使って治療や補償を受けることができます。自賠責保険を使うより有利な場合もあるため、予め基本的な知識や特徴を知っておくことが大切です。

ここでは、労災保険の対象者や給付の内容、事故における労災利用のメリットについて解説します。

労災の対象者と利用方法

会社に所属する人は、正社員からアルバイト、日雇い労働者に至るまで、労災保険の対象者となります。労災保険は会社単位で加入するもので、労働者は何もしなくても労災を使える立場にいますので、交通事故が起こった時も必要に応じて積極的に利用しメリットを享受しましょう。

交通事故に遭って治療が必要になり、労災保険を使うことに決めた場合は、治療を受ける医療機関が労災指定病院か否かによって、以下の通り手続きを行うことになります。

労災指定病院の場合

労災保険を使って治療を受けたいことを申し出、後日「療養補償給付(療養給付)たる療養の給付請求書」の書式を病院に提出します。

労災指定病院以外の場合

治療費はいったん全額自己負担で支払い、治療内容について「療養補償給付(療養給付)たる療養の給付請求書」の書式に必要事項の記載を求めます。作成した書式に自己負担した治療費の領収書を添付の上、労働基準監督署に提出すると、数ヶ月先になりますが自己負担分が返金されることになります。

交通事故の場合、それが第三者行為による損害となるため、「療養補償給付(療養給付)たる療養の給付請求書」の書式に加えて「第三者行為災害届」も併せて労働基準監督署に提出します。これにより労災保険は、保険で賄った被害者の治療費分を加害者に対して請求することができるのです。

労災保険で受けられる給付の種類

労災保険を利用すると、被害を受けたことによる様々な損害について補償を受けることができます。主な補償は以下の通りです。

療養給付

医師による診察や薬剤等の処方、必要な処置や手術、必要とされる療養に対する世話や看護の費用等について、労災保険から給付を受けることができます。

休業給付

怪我で働けない場合の生活補償を受けることができ、給与の約60%相当額が休業4日目から支給されます。加えて給与の20%に相当する休業特別支給金も支給されます。

傷病年金

怪我治療が長期化した場合、怪我が治っていないことに加え、その程度が厚労省の定める1~3級に該当すると判断された場合、休業給付は傷病年金に切り替わります。

この他にも、後遺症が認められた場合の障害給付や介護が必要になった場合の介護給付、本人が亡くなった場合の遺族給付等があります。

交通事故における労災保険利用のメリット

交通事故では加害者の過失が100%ということは稀で、一般的には被害者にも若干の過失が認められます。通常、保険金の給付を受ける際には過失相殺された後の残額を受け取ることになりますが、労災保険では過失相殺自体が行われないため、かかった治療費の全てがカバーされます。

加えて労災保険では、治療費以外にも怪我治療による休業補償を受けることができるため、生活面でも不安や負担を大きく軽減させることができます。

仮に、被害者に30%の過失がある事故の怪我治療費が100万円で、入通院慰謝料が30万円、休業損害が40万円だったとします。この場合、労災保険を利用するかどうかで以下のような金額の差が生じることになります。

労災保険を使わなかった場合

合計損害額は170万円ですが、被害者の過失を相殺すると、相手方の自賠責保険から実際に受け取れる額は170万円×70%=119万円となります。ここから治療費を支払うと、119万円-100万円=19万円が手元に残ることになります。

労災保険を使った場合

治療費は全て労災保険でカバーされるため負担額は0円となります。一方、入通院慰謝料と休業損害の合計70万円となり、労災保険では給与の約60%相当の休業補償給付と20%相当の休業特別支給が行われるため、休業損害40万円の60%にあたる16万円+20%にあたる8万円=24万円が支給されます。

相手方自賠責保険からは、損害合計額70万円から給付された休業損害補償16万円を差し引いた時の残り54万円が支払われます。治療費負担は0円であるため、被害者の手元には合計24万円+54万円=78万円が残ることになります。

(あくまで単純計算で想定されるケースと捉えてください)

労災保険を利用することによって、治療費全額がカバーされるだけでなく、十分な損害賠償額を手にできる点が大きなメリットの一つとなります。