後遺障害における逸失利益の計算方法を詳しく解説

代表弁護士 濱 悠吾 (はま ゆうご)

事故に遭い後遺障害を負ってしまった場合、働きたくても働けない状態に陥ったり、収入が激減したりする等の経済的損失を被ることになります。

加害者に対しては、慰謝料に加えて本来得られたはずの様々な利益に対しても賠償を求めることができます。

ここでは、後遺障害を負ったことによる逸失利益の算出要素と算定方法について解説します。

「逸失利益」とは事故を起因とする経済的損失を賠償するためのもの

事故による損害は、経済的な不利益を被ったことによる財産的損害と、苦痛を強いられたことによる精神的損害の2つを柱として賠償金の算定を行います。

中でも財産的損害は、事故のために出費せざるを得なくなった治療費等を「積極損害」、事故により本来得られたはずの利益を喪失したとする「消極損害」に分けることができます。

消極損害に属するものとして「逸失利益」という考え方があり、これは、事故が起こらず怪我を負ったり治療を行ったりする必要がなければ得られた利益がある、という前提に基づいて機会損失した金額を算定します。

つまり、事故に遭わず日常生活を送っていた場合に得られたはずの利益と、怪我や障害により失われたと仮定される利益との差額が逸失利益ということになります。

経済的損失について似た考え方に基づく「休業損害」がありますが、怪我治療を継続した後に症状固定となったタイミングを境とし、症状固定前の分を休業損害、症状固定後の分を逸失利益と区別しています。

逸失利益の算出要素と算定方法

逸失利益を算出するためには、基礎収入・労働能力喪失率・労働能力喪失期間・ライプニッツ係数の3要素を明らかにした上で、規定の計算式に当てはめて金額を出します。

基礎収入

事故発生時の収入額が基本となりますが、本人がまだ若く将来的により多くの利益を得る可能性がある場合や賃金が支払われない主婦の場合等は、賃金センサスに基づいて基礎収入分を確定します。

労働能力喪失率

被害者本人の年齢や職業、症状固定時点での症状により、定められた割合から該当するものを使用します。

例えば後遺障害等級14級の場合は労働能力喪失率が5%になりますが、1級になると100%となり、等級が上がるにつれて割合も上がる仕組みになっています。

労働能力喪失期間

67歳を基準とするため、それより年齢が若い場合は67歳までの期間が労働能力喪失期間となります。従って60歳で症状固定となった人の労働能力喪失期間は7年ですが、高齢の人物の場合、平均余命の2分の1と比べて長い方が採用されることになります。

厚生労働省によると、60歳男性の平成22年時点での平均余命は22.84歳なので、その2分の1は約11年となり、7年よりも長いことから労働能力喪失期間が11年となります。

逆に67歳よりも高齢の人物には平均余命の2分の1が採用されるので、75歳女性の場合では、余命15.38歳の2分の1である7年が労働能力喪失期間となります。

ライプニッツ係数

症状固定後の将来について本来得られたはずの逸失利益は、賠償の仕組み上一括で支払われることになります。

しかし実際には、未来分の利益までまとめて受け取ることになるため、期間の利益が生じることになります。そこで逸失利益の計算では、期間の利益分を年利として差し引くことになっており、これを「中間利息の控除」と呼んでいます。

ライプニッツ係数は本人の年齢と平均余命から算出され、60歳の人物のライプニッツ係数は8.863となっています。

逸失利益の計算

年収600万円の60歳男性が後遺障害14級と認定された場合の逸失利益を、以下の算定式に当てはめて算出してみます。

基礎収入(600万円)×労働能力喪失率(14級で5%)×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数(8.863)=2,658,900円

従ってこの人物の逸失利益は2,658,900円となることがわかります。

逸失利益を最大化するには当事務所までご相談を

逸失利益は後遺障害等級が大きく影響することになるため、まずは納得のいく等級を獲得することが先決となります。

当事務所では、入通院時点から後遺障害等級認定を見据えたサポートを行っていますので、医師との関わり方や適切な通院回数等、正しい入通院を実行して逸失利益を最大化するための準備を行うことができます。

やはり怪我の程度や残った症状が一番重要になってきますので、画像診断を始めとする各種の検査も積極的に受けるようアドバイスしています。

逸失利益の計算や賠償金請求の手続きは決して簡単ではなく、困難を伴う上に間違いの許されないものでもあります。同時に、最大限可能な額を獲得するための見通しを立てて行動しなければいけません。

お一人で難しい問題を抱えることなく、ぜひ、交通事故案件の取り扱いが豊富な、当事務所までお気軽にご相談ください。